そもそもべっ甲(鼈甲)の原料とは
べっ甲はインド洋やカリブ海など赤道付近の温かい海に生息する海亀タイマイの甲羅が材料です。タイマイの甲羅は、そのほとんどを東南アジアやカリブ諸国などタイマイを食用とする文化のある国からの輸入に頼っていました。

ワシントン条約(CITES)の加盟と留保措置
日本は、1980年にワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約)に加盟しましたが、べっ甲細工という伝統文化を保護するためにタイマイの国際取引禁止に対する留保措置が取られ、商業目的の輸入を継続していました。しかし、1994年に留保措置は撤回され、タイマイ(べっ甲)の商業取引は禁止となったため、それまでに確保した素材で、現在のべっ甲細工は作られています。
2015年には江戸べっ甲、翌年には長崎べっ甲が経済産業省指定の日本伝統的工芸品に認められましたが、べっ甲素材は年々少なくなりべっ甲の希少性は高まる一方です。また、現在では石垣島でタイマイの養殖も行われています。石垣べっ甲を使用したメガネもごく少量ではありますが、出回り始めており、今後に期待が高まります。
べっ甲の色と種類
- 首甲 くびこう(鳶甲 とんびこう)
- 背甲 せこう
- 船甲 ふなこう
- 本甲 ほんこう(量甲 おもこう)
- 袖甲 そでこう(結甲 むすびこう)
- 爪甲 つめこう

1から5の部位は、ばら斑、トロ甲、黒甲、上トロ甲などの材料に、6の爪高と腹側の肚甲(はらこう)は白甲やオレンジ甲の材料となる希少部位です。基本的にべっ甲の色が薄いほど高価になります。

白甲(しろこう)
爪甲と肚甲の一部からしか取れないため、べっ甲の中でも最も高級なカラー。白甲という名前ですが、クリア感のある黄色。そして白甲の中でもさらに薄い部分だけを選りすぐって作製された抜甲(ぬきこう)は現在では幻の逸品。また、ややオレンジがかったオレンジ甲も白甲と同じくらいに希少です。

白バラ甲(しろばらこう)
主に背甲の薄い部分を集めて作られる柄の入った黄色のべっ甲色。べっ甲らしい程よい柄が人気で、現在では白甲と同じくらいの希少性があります。濃い茶色と黄色が混じったものは黒バラ甲と呼ばれます。

色べっ甲(いろべっこう)
白甲や白バラ甲など薄い色のべっ甲を染色、もしくはカラーコーティングしたもの。赤やグリーン、ブルーなど様々なカラーが存在します。

トロ甲(とろこう)
背甲から作る、濃淡の弱い茶のべっ甲。上品にお顔に馴染む色合いが人気です。色の薄さや色調により極上トロ甲、上トロ甲、中トロ甲などと名称が変わることもあります。

黒甲(くろこう)
背甲の濃い茶色の部分だけを集めて作られたべっ甲。一見、真っ黒に見えますが、光の具合により茶色にも見える奥深いカラーです。かつては真黒(しんくろ)と呼ばれるほぼ黒色なものも存在しましたが、現在では材料の不足により製造できません。

並甲(なみこう)
タイマイの甲羅から最も多く取れる濃い茶色の部分を集めて作ったもの。べっ甲の中でも最もリーズナブルではありますが、べっ甲らしい奥深さと柔らかみは十分に感じられます。